会社からオーナーへの貸付金は百害あって一利なし。貸付金のリスク管理<No 1615>
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法人と個人は別人格
会社からオーナー個人にお金を貸し付けた場合、その処理はどうなるのか?
フリーランスや個人事業であれば、事業資金を引き出して、プライベートで使ってもお咎めはありません。
事業(山本祐次良税理士事務所)とプライベート(山本祐次良)は一心同体なので。
会社の場合、会社は法人になります。
法人と個人は、別人格。
法人から個人へ資金の移動があれば、その用途は法人税法上、明らかにしておかなければなりません。
このあたりをあやふやにしていると、思わぬ落とし穴にはまります。
貸付金のリスク管理
税務署への影響
会社として事業を営んでいても、貸付金の処理については、それほど馴染みはないでしょう。
頻繁に出てくる取引ではないので。
会社の預金からお金が出ていくと、その支払いがなんであるのか明確にしなければなりません。
- 経費
- 預金の引き出し
- 借入金(負債)の返済
- 資産の取得
など。
相手が事業上の取引業者であれば経費(給与以外の)になり、オーナー個人(役員)への支払いだと給料(役員給与)として経費になります。
これが、給料とは別に、オーナー個人が会社から引き出した場合どうなるのか?
会社からオーナー個人に対する貸付金として処理します。
貸付金として処理すると、税務署は、
オーナー個人への給与(役員賞与)ではないのか?
という疑念を持たれます。
税務調査で、この疑念を払拭できないと、給与に係る所得税が課せられるのです。
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ただ、オーナー個人への渡し切りの資金ではなく、あくまで返金してもらう貸付金であるならば。
それを証明すべく、通常の金銭貸借と同様に、オーナー個人から利息を取らなければなりません。
では、この利息の金利、どれくらいに設定すればいいのか?
金融機関で借りれば、金利の設定はされていますが、会社とオーナーだと、契約書での金利設定まではされていないケースが多いでしょう。
そんなときは、法律にのっとった利息を取ることになります。
所得税基本通達36-49
法人が貸し付けた金利は、年度ごとに決められています。
- 令和4年中の貸付け 0.9%
- 令和3年中の貸付け 1.0%
- 平成30年から令和2年中の貸付け 1.6%
- 平成29年中の貸付け 1.7%
- 平成28年以前の貸付 リンク先参照 金銭を貸し付けたとき
この利率は、国が金融機関に貸し出す公定歩合を基準にして決められています。
注意すべきは、年度ごとに金利を選択するのではなく、最初に借り入れた時点での金利を継続すること。
平成29年に貸し付けたのであれば、令和4年に受け取る金利も1.7%で計算します。
この金利をオーナー個人が会社へ支払っていれば、給与課税されるリスクは下がります。
- 現預金 / 雑収入(受取利息)
仮に、支払いがなかった場合でも、最低限、貸付金に係る利息を計上しておくだけでもリスクヘッジになります。
- 貸付金 / 雑収入(受取利息)
ただ、これだと貸付金が減るどころか増えるので、褒められるやりかたではありません。
金融機関
金融機関も、貸付金がある決算書には、いいイメージを持ってはくれません。
というのも、仮に、金融機関がその会社に対して融資していたとします。
融資を受けた資金を、設備投資や運転資金など、決められた通りに使っていればいいですが。
会社をスルーして個人へ流出していれば、金融機関に「資金使途違反しているのでは」という疑念を持たれます。
金融機関から今後も融資を受けるつもりなら、貸付金の計上はなくしたほうが懸命でしょう。
説明できない資金の移動はリスクあり
会社からオーナーへ資金を貸付した場合のリスク管理についてお伝えしました。
貸付金に対しては金利を取っておかなければ給与課税される税務署リスクがあります。
金融機関からは、そもそもいい目では見られません。
会社から個人へ資金移動するのであれば、給与(役員報酬)として受け取るのが無難です。
無税で資金移動したいと考えるかたもいらっしゃるでしょうが。
日本の税法は、資金の移動があると、贈与税なり、相続税なり、所得税なり税金がかかる仕組みになっています。
きちんと説明できない資金の移動は、黒もしくは黒に近いグレーな取引だと思っておいたほうがよろしいかと。
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