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相続税改正による影響
2015年の相続税改正から1年半が経過しました。
未だに相続ビジネスが新聞紙面を賑わしています。
将来の相続税を不安に感じる中間層をターゲットに日経新聞の広告欄には、ほぼ毎日のように、相続セミナーの案内が掲載されています。
相続セミナーを主催する多くには、
- 相続専門の税理士
- 住宅販売会社
- 金融機関
などが挙げられます。
ことの発端は、先の改正にて、相続税の基礎控除が以前の6割に縮小されたことにあります。
広告やセミナーの多くは、「都市圏に一軒家と多少の金融資産を持っていれば相続税がかかる」として中間層をあおります。
しかし、亡くなられたかたの住んでいた家のある土地は、「特定居住用宅地等」に該当することにより、8割の減額、つまり更地の2割の評価にしかならないのです。
その結果、相続税を払わずに済むケースも多く見受けられます。
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必要以上の相続対策は「本末転倒」
小規模宅地等の特例は「確定申告」することが条件
相続税の財産評価をする場合において国は、同じ土地でも故人の生活に大きく関わるものについては、その土地の評価に特例を設けています。
- 故人の住んでいた土地(特定居住用宅地等)
- 故人の事業用に使っていた土地(特定事業用宅地等)
- 故人が貸し付けていた賃貸物件の土地(貸付事業用宅地等)
(便宜上、一部省略しています。)
この特例の適用を受けることにより1と2は80%、3は50%の額が土地を更地として算定した評価額から減額されます。
この小規模宅地等の特例のポイントは、「確定申告」することが条件です。
よって、特例を使うことにより実際に支払う相続税はゼロだけれでも、申告が必要になります。
その賃貸ビル購入は本当に必要なのか
住宅販売会社や金融機関は、ビジネスチャンスとばかりに、借入を伴う賃貸ビル経営を、節税対策に有効な手段だとして営業をかけています。
新聞紙面やセミナーの多くはこのたぐいのものです。
これらの方々も商売ですので、自分達の商品を魅力的なものとして積極的に勧めます。
その中でも住宅販売会社が、将来の空き部屋による収入減を補ってくれる「家賃保証」というサービスがあります。
この「家賃保証」の適用をすることにより、建物ができた当初は収入が順調に安定します。
しかし、年数の経過により、「家賃保証」の条件の見直しが行われたとき、トラブルとなるケースが見受けられます。
そして、現在は核家族化に伴い、亡くなられたかたの家がそのまま空き家となり、数十年後の空き家率は現状の倍近い数字になると予想されています。
そんな中で、当初の借入金返済計画が10年後、20年後も維持継続出来るかどうかは未知数です。
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想定以上のリスクがあることも考える
賃貸ビル経営は、家賃収入の減少に伴い、当初の返済計画に収入が追いつかなくなり、資産を手放してしまうこともあります。
何より、お金の管理やそれに伴う気苦労は大きいです。
実際の相続税額を大きく上回る借金を扱うことには、リスクが介在することを念頭におきましょう。