医療費や住宅ローンが申告で返ってくるわけではない理由<No 1186>
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知識の本質は自分で取りに行く
長年、申告業務に携わっていって、変だなぁと思うことがあります。
一つは医療費控除。
病院での診療費や薬局で支払いがあると、申告時に医療費控除として所得から差し引くことができます。
医療費控除という名称自体、多く方がご存知ですが、実際の細かな計算までは知らない方のほうが多いのではないでしょうか。
医療費控除は、医療費が10万円(所得の5%といずれか低い金額。以下「一定金額」)を超えた場合、超えた金額が医療費控除の対象となります。
記帳指導や相談会場では、皆さんたくさんの領収書を集めて、丁寧に集計してくれているのですが、どれだけの税金が安くなるのかお伝えすると皆さん一様に苦笑いされます。
住宅ローン控除にしても、ご自身が想定していた金額よりも少なくてがっかりされる方がいらっしゃいます。
払った診療費や住宅ローンがそのまま返ってくると理解されている方が多く、制度の内容が十分に周知されているとは言えません。
国は制度の仕組みを丁寧に説明してくれるわけではないので、何事も自分で知識を取りに行く癖をつけておいた方がいいでしょう。
医療費や住宅ローンが申告で返ってくるわけではない理由
医療費控除の現実
医療費控除は、集めた領収書の金額がそっくりそのまま返ってくるわけではありません。
前述の通り、一定金額を超えたら、その超えた金額だけ所得から差し引くことができるだけです。
加えて、所得は税率をかける前の金額です。
仮に所得が100万円で、支払った医療費が7万円の場合だと、
- 10万円
- 100万円✕5%=5万円(所得の5%)
10万円>5万円で、少ない方の5万円を超えていれば控除が受けられます。
医療費控除:7万円−5万円=2万円
100万円の所得だと5%の税率なので、
(前述の医療費の計算の5%とは異なります)
2万円✕5%=1,000円
7万円の医療費で、1,000円所得税が下がるという仕組みです。
7万円の領収書があって、そのまま7万円が返ってくるとは思わないでも、「数千円くらいにはなるのでは」というのが普通の人の心情でしょう。
しかし、国としてはあくまでも、「医療でたくさんの支払いがあるのなら、税金の計算をする上で、多少考慮してあげます」程度の趣旨なのです。
医療費で7万円分の領収書となると、結構な数になります。
こまめに保管しておかなければいけませんし、集計するのも結構な手間がかかります。
それでいて、1,000円しか下がらないのならと、最初から集めない方もいらっしゃいます。
申告される方にとっても、税理士にとっても手間がかかる割には恩恵はそれほどありません。
気休めのような制度はやめた方がいいというのが、税理士の本音でしょう。
住宅ローン控除の現実
住宅ローン控除は、医療費控除のように所得から差し引くのではなく、税金そのものを差し引いてくれる税額控除です。
医療費控除のように控除金額に税率をかけて、その後金額が小さくなることはありません。
10万円の住宅ローン控除であれば、10万円税金が少なくなります。
節税の効果はありますが、制度の趣旨をきちんと理解していないと、心理的に損をすることもあります。
心理的に言ったのは、実際に損するわけではないのですが、期待していたよりも税金が安くならないことがあるということです。
広告や折込チラシで、毎月の返済額から住宅ローン控除を月額に勘案した金額を控除して、
「実質、返済額は5万円」などと表示していることがあります。
この場合の住宅ローン控除額は適当な数字で、自分に当てはまるとは限りません。
住宅ローン控除は、ローンの返済額がそのまま戻ってくるわけではなく。
あくまでも、自分が払った税金が戻ってくるだけです。
お勤めで給料取りの方であれば、毎月天引きされた源泉所得税のトータルが限度です。
仮に、
- 取得価額3,000万円
- ローン残高が2,500万円
- 1%の控除が受けられる
とすると。
3,000>2,500(いずれか少ない金額) 2,500万円✕1%=25万円
25万円の控除を受けられる権利があるのですが、天引きされた源泉所得税のトータルが10万円ならば、10万円が限度となります。
扶養家族が多くて、毎月の天引き額が少ない場合などはこうしたケースに該当することがあります。
(児童手当ができてからは減りましたが)
故に、広告の「実質〇〇」には要注意。
営業マンも売りたいので、自分に都合の悪いことは、強調してくれません。
自分で申告する見えてくる
お勤めで給料取りだと年末調整で済むので、自分で申告する機会は少ないでしょう。
ここ数年は、独立してフリーランスになる方や、複業される方も増えてきたので申告される方は増えています。
自分で申告書をつくって、自分で提出すれば税金の仕組みが徐々にわかってきます。
知らないより、知っている方が得することもあるので自分で申告はオススメです。
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