法人成り一年目で注意しておきたいこと。会社から安易に引き出せない
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あとからできることは少ない
働き方改革、コロナ、デジタル化が進んだことによる影響もあってか、ここ10年くらい独立に対しての敷居は低くなっています。
個人であれば、税務署へ開業届を出せば事業主としての仲間入りです。
法人だと個人に比べれば手続き関係が煩雑ですが、資本金1円からでも設立できるようになりましたし、ネットで法人をつくることもできるようになりました。
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とはいえ、法人をつくるとなると、それなりの覚悟と準備は必要でしょう。
つくるのは簡単でも、その後に、
- 経理
- 資金繰り
- 決算
- 法人税の申告
といったことが待ち構えています。
特に、法人設立一年目は、本業に集中するあまり経理が遅くなりがち。
時間が経って後から間違いに気づいても、過去を修正することはできません。
法人成り一年目で気をつけておきたいことをお伝えします。
法人成り一年目で注意しておきたいこと
資本金は自分のお金じゃなくなる
まずは、法人の資本金をどうやって捻出するか?
現物出資という方法もありますが、現金を払い込むのがセオリーでしょう。
昔は、株式会社なら最低1,000万が必要でしたが、今は、1円からでも会社をつくることができます。
資本金1円でも会社をつくることはできますが、会社運営が1円じゃできないことはどなたでもおわかりかと。
そうなると、例え1円で会社をつくったとしても、事業がスタートすれば、会社にお金が必要となります。
結局、会社の事業資金の作り方は、
- 資本金として出資する
- 会社が自分から借りる(役員借入金)
- 銀行から借りる(借入金)
現物出資を除けば、いずれかの方法で資金をつくるわけです。
1円じゃ事業は回らないでしょうから、出資するなら最低運転資金ひと月分くらいにはしておきたいところです。
気をつけなければならないのは、会社にとっての資本金は自分のお金ではなくなるということ。
出資者としての権利は残りますが、資本金として会社の口座に入ったお金は会社のもの。
個人のお金として自由に使うことはできません。
「自分が出資したお金なのに、なんで自由に使えないの?」と思うかたがいるかもしれませんが、証券会社で株を買ったら手元からお金がなくなりますよね。
お金を返してもらうのであれば、株を売らなければなりません。
それと同じようなものです。
なので、見栄を張って資本金を多くしても、あとで簡単に引き出せないので、注意しておきましょう。
資本金は会社に預けたお金、安易に引き出すことはできないということ。
会社からお金を引き出すのなら、給料として「売上から引き出す」「利益から引き出す」くらいに思っておいたほうがいいでしょう。
役員報酬(給料)は安易に変えられない
会社をつくるにあたってオーナー社長であれば自分が代表取締役の役員なります。
社員が会社から受け取るのは給料ですが、役員が会社から受け取るのは役員報酬です。
給料と役員報酬は、呼び方が違うだけではありません。
法律上の決まりごとがたくさんあるのです。
なかでも、抑えておかなければならないのは、「役員報酬の額は安易に変更できない」ということ。
会社のスタート時に決めた役員報酬は、その後、決算が終わるまで同じ額を支給し続けます。
報酬の額を変更するタイミングは、決算日以降、決算が確定した日(株主総会の日)になります。
仮に、3/31日が決算日で、5/10に決算が確定したのなら、その日に報酬の額を変更し、6月から変更後の額を支給します。
このとき、気をつけるのは、事業年度開始の日から3ヶ月以内に決めること。
4月1日が事業年度開始なら6月30日までに決めなければなりません。
ちなみに、払いたいけど払えない場合はどうすればいいのか?
当面のことであれば、経理上は、未払金として役員報酬を計上して、後日、資金繰りが改善したときに会社から個人へ支払うこと。
また、代表者本人が入院するといったような、通常の業務が行えないようなケースだと、臨時改定事由といって、役員報酬の額を年の中途で減らすことが認められてます。
気をつけなければならないのは、多少売上が減ったからといった理由では、臨時改定事由に該当しないということ。
資金繰りの悪化も同じです。
払えないのであれば、未払金で処理して、次の決算で役員報酬の額を下げましょう。
ちなみに、臨時改定事由に該当しないにもかかわらず、年の中途で報酬額を下げたらどうなるのか?
その事業年度のスタートから下げた報酬の額でもらっていたことになります。
要は、下げる前後の差額が経費にならないということです。
厳密に言えば、決算書では経費になってますが、法人税の申告書で加算調整をすることになります。
決算書の貸付金はいいことゼロ
最後に、役員貸付金についてお伝えします。
役員貸付金は、会社が役員に対して貸したお金を意味します。
会社にとっては貸付金、役員にとっては借入金。
この役員貸付金がどういったときに発生するのか?
仮に、役員報酬を30万円に設定したとしましょう。
業績が好調で、月に30万以上のお金を引き出したら、差額は役員に対する貸付金となります。
貸付金だから、いずれは会社に返さなければなりません。
また、役員報酬の額を低く設定してしまった場合なんかでも起こりうるでしょう。
臨時的に賞与を出す、「事前確定届出給与」という方法もありますが、事前に賞与の額を決めなければならないのでおすすめしません。
もちろん、事業にかかわる支出であれば、会社の経費となるので問題ありません。
そうでないなら、決算まで待って、次の年度から役員報酬の額をアップさせるのが賢明でしょう。
仮に、会社から借りたお金を返さずにいると、決算書に「貸付金」と表示されることになります。
この貸付金、税務署にとったら、「私的な使用で賞与じゃないの?」と調査となるリスクが高まります。
また、銀行にとっても、「うちが貸したお金を社長が使ってんじゃないの?」と解釈される恐れがあります。
役員貸付金、会社にとっていいことは一つもありません。
後でやれることは少ない
独立1年目は本業に注力しがちですが、丁寧な経理は大事なこと。
適当にやって、後で直せばいいと思っても、やれることに限りはあります。
必要以上に怖がることはありませんが、会社をつくる前と後で、身近にいる専門家に相談されておいたほうがいいでしょう。
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