所得税

平成 29 年度税制改正による配偶者控除制度を検証<No 166>

yujiroyamamoto

 

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配偶者控除制度

平成 29 年度税制改正の大綱が、財務省から発表されました。

ビール系飲料の税率が一本化になったり、
エコカー減税の延長であったりいろいろとありますが、
なかでも、注目を集めているのは「配偶者控除の見直し」でしょうか。

どうして見直されたのか

そもそも、なんで配偶者控除制度が見直しがされたのか。

日本は、超高齢化社会になって現役で働く世代が減りつつあります。

団塊世代も60歳を超えましたので、早い方であれば既に現役を退いています。

現在の日本の人口の中で最も多いグループを形成する団塊世代のリタイアによって製造業を初めとした多くの事業で、組織の中核をなした「頭脳」が減っています。

本来は、次の世代である50代、40代が頑張ればいいのですが、
多くの企業でリストラや事業の再編を行うことによってこれらの世代も不足しています。

もっと先の将来をみれば、少子化で人口爆発どころか人口を維持することも出来ません。

そこで、国は雇用を増やす必要がありました。

もっと女性が社会に出て活躍して、不足した雇用を補える社会にするために、
今回の見直しが行われました。

これまでのあらまし

これまで、共働き世帯の夫(又は妻。以下同じ)が、配偶者控除の適用を受けるために、
妻(又は夫。以下同じ)の給料を103万円に抑えていました。

なぜ、103万円なのかというと、
配偶者控除を受ける要件が、「妻の所得金額が38万円以下」であるからです。

計算式にすると、給料収入103万円-給与所得控除65万円=38万円≦38万円で、38万円以下となります。

この場合の給与所得控除とは、会社や自営業者でいう「経費」にあたるもので、サラリーマン認められた概算の経費です。

妻の所得をさげることによって、夫の所得税を下げていました。

もう一つの要因は、配偶者控除とは別に、企業が配偶者手当を支給していたからです。

企業の多くは、配偶者手当の支給基準を配偶者控除と同じ103万以下に設定しており、
妻の給料が103万円を越えると配偶者手当がなくなります。

税金ではなく、毎月の給料として支給されるキャッシュが減ることはサラリーマンにとっては痛いですね。

今回の改正で変わった点

これまで、配偶者の給料を103万円以下にに抑える世帯が世の中全体に多くありました。

本来、もっと働きたい女性は多くいるのだど想定した国は、女性が働きやすくするために、
103万の限度額を150万に増やしました。

ただし、夫の所得に制限を設けて、給料1,120万円(所得900万円)を超えると控除が徐々に減り、給料1,220万円(所得1,000万円)を超えると控除がなくなります。

とはいっても、1,000万円を超える世帯なら、数万円程度の控除を気にかけることもないでしょう。

社会保険加入との関係

配偶者控除と合わせて考えなければならないのが、社会保険の加入義務です。

これまで、配偶者控除の制限が103万であるのに対して、社会保険の加入は130万でした。

ですので、「配偶者控除は受けられなくてもいいけど、社会保険には加入したくない」として、配偶者の給料を130万円以下に抑える方もいました。

この社会保険も、平成28年10月から制度が変わり加入対象が広がりました。

これまで、週に30時間以上働く方が対象であったのが、501人以上の企業では
週に20時間以上の方でも対象なりました。

配偶者控除の要件が150万円になっても、社会保険の加入をためらってこれまで通り130万以下に抑えるケースも多いでしょう。

税金が38万円安くなるわけではない

世の中、「配偶者控除=38万円」ばかりが広まっていますが、
実際38万円の税金が安くなるわけではありません。

所得税の計算は、収入金額から配偶者控除などの所得控除を差し引きます。

給料所得者のサラリーマンであれば、

  • 給与所得控除(概算経費)
  • 生命保険料控除
  • 損害保険料控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 基礎控除

などがあります。

これらの控除を差し引いた金額を「課税所得金額」と言います。

そして、所得税を計算するには、この課税所得金額に税率をかけます。

課税所得が1,949,000円場合、おおよそ給料総額は、3,000,000円です。

3,299,000円であれば、給料総額は4,800,000円です。

つまり、給料300万の方が配偶者控除で得られる所得税の恩恵は、

¥380,000×5%=¥19,000 

に過ぎません。

住民税を加算しても、

¥380,000×15%=¥57,000

です。

もっと働きたいと願う世帯にとって、¥57,000で失うものは何か考える必要があります。

家族が望むライフスタイル

今回、改正により配偶者の所得制限が150万円に増えました。

これにより、雇用時間を伸ばして収入を増やす世帯も増加するでしょう。

しかし、

  • 夫の収入だけでは家計が苦しい
  • 苦しくはないが、より良い生活がしたい
  • お金ではなく正社員として働くこと自体に魅力を感じている

などの理由があれば、目先にわずかな税金に惑わされることはありません。

働ける意欲と環境があるのなら、働くべきです。

より多くの時間を働くことによって、仕事のスキルはアップします。

社会に貢献出来ているという意識も芽生えます。

税金だけで考えるのではなく、「家族が望むライフスタイル」に近づくことが大切です。

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