生命保険を活用した遺産分割対策。保険は遺産分割の対象にならない<No 316>

保険の取り扱いには注意が必要

相続税増税により民間による金融商品を利用した節税対策が多く世に出回るようになりました。

なかでも、生命保険は増税以前から広く利用されています。

生命保険を利用した節税対策には多くのメリットがありますが、
使い方を誤るとメリットどころかマイナスになってしまうものもあります。

今回、相続対策のうち、遺産分割対策について見ていきます。

 

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生命保険を利用した遺産分割対策

生命保険を利用した相続対策のなかには、相続税そのものを下げる効果のある「相続税対策」、
また、遺産分割を円滑に行うための「遺産分割対策」があります。

 

非課税枠ねらい

生命保険を利用した「相続税対策」の代表が、「生命保険の非課税枠」を利用するものです。

相続財産の計算上、生命保険は本来の財産とは異なり、「みなし相続財産」という位置づけになります。

そして、みなし相続財産である生命保険には、特別に設けられた非課税枠というものがあります。

非課税枠は、法定相続人の数に応じて決められます。

法定相続人ひとり当たりの非課税枠は500万円。

仮に、3名の法定相続人であれば、500万円 × 3名=1,500万円が非課税となり相続税がかからないことになります。

結論、生前に現金を保険に替えることで相続税の負担を軽くし、
かつ、相続後は現金として手元に残すことができます。

 

遺産分割対策によるメリット

非課税枠ねらいは、相続税そのものを下げる相続税対策ですが、遺産分割対策は遺産分割を円滑に行うためのものです。

つまり、人間対策です。

受取人を指定できる

保険だから当然のことですが、これが大事なことです。

受取人を指定すると言うことは、故人である被相続人の意思がそこに込められています。

それは誰も覆せません。

遺言書のない事例が多いなかで、相続人を受取人とする保険加入は、故人の遺志を明確にし、
相続の円滑化に役立ちます。

 

預金口座のように凍結しない

「葬儀費用が払えない」
「生活費が払えない」

故人の預金口座が凍結すると、預金の引き出しは簡単には行えません。

遺言書があればいいですが、なければ、遺産分割が終わるまではそのままです。

そんなとき、故人を被保険者とする保険に加入していれば、相続に関する当面の費用を保険で賄うことが可能です。

保険金がおりるのは、受取人である相続人の預金口座です。

ですので、誰のおとがめもなく、受取人の意思で自由に使うことができます。

ただし、受取人は必ず「相続人」にしておかなければなりません。

故人を受取人にしていたら、遺産分割の対象になり遺産分割対策にはなりません。

 

分割できない不動産の場合

相続財産が自宅のみ。

息子兄弟が二人の場合。

兄弟それぞれに持ち家であれば、相続した故人の自宅を売却して分ければ問題はありません。

しかし、どちらか一方が故人と暮らしていれば、相続後もそのまま住むことになるでしょう。

このようなケースも保険があれば、解決することが出来ます。

ただし、

  • 兄・・・自宅
  • 弟・・・保険金

とはしないこと。

保険金は遺産分割の対象とはならないので、仮に、弟が法定相続分を主張すれば、
遺産分割はまとまりません。

さらに、遺言書があったとしても、弟には「遺留分」という最低限の権利があります。
*兄弟姉妹にはありません

なので、自分亡き後揉めないためにも、

  • 兄・・・自宅、保険金

とします。

そして、相続後に兄が取得した保険金を元手にして現金を弟に譲るかたちをとります。
(代償分割)

 

遺留分減災請求の対象とならない

相続人に与えらた最低限の権利(遺留分)はあくまで通常の相続財産(さきほどであれば不動産)にのみ及びます。

よって、保険金は受取人固有の財産であるため他の相続人から侵害されることはありません。

 

放棄をしても受け取ることができる

仮に、故人に多額の借金があり、相続放棄をしたとしても、受取人は生命保険を受け取ることができます。

ただし、放棄をしたら500万円の非課税枠は使えません。

 

 

遺産分割対策によるデメリット

デメリットとまではいきませんが、注意すべきことはあります。

 

受取人を故人にしない

保険を利用した遺産分割対策は、受取人を意中の相続人にすることが前提条件です。

ここを外してしまうと、効果はありません。

受取人を故人である被相続人とすれば、保険金は遺産分割の対象となってしまいます。

自分の意図した特定の相続人を受取人にしなければ対策効果はありません。

 

亡くなる直前の契約はリスクあり

亡くなる直前の契約は、税務当局からのお咎めを受けるリスクもありますが、
保険契約そのものに加入できないこともあります。

  • 高齢である
  • 病気である

など。

そして、加入できたとしても、高齢であるがために、保険料が高額になることもあります。

相続税対策は将来を見沿えて早い段階で行います。

 

他の相続人との財産規模に大きな差がある

遺産の額に比べて保険金の額が大きければ、「特別受益」とみなされて、
相続財産に持ち戻しされます。

持ち戻しされれば、保険金の額を相続財産にいったん含めて計算するので、
遺産分割対策にはなりません。

 

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相続税対策と遺産分割対策は分けて考える

相続税対策が万全でも、遺産分割が纏まらなければ本末転倒です。

相続税対策も遺産分割対策も付け焼き刃ではうまくいきません。

時間をかけた入念な準備が必要です。