贈与が得か?相続が得か?自宅を贈与する場合の注意点<No 1163>
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「贈与ありき」で考えない
将来の相続を見越して、生前に贈与をコツコツやられることもあるでしょう。
現金であれば、細かい金額を設定できるので、贈与はしやすいものです。
贈与税をまったく払わないのであれば、基礎控除(110万円以下)で贈与すればいいので。
ただ、不動産となると、贈与は難しいものです。
比較的大きな金額となりますし、場合によっては贈与せずに相続までそのままにしておく方が税額が安くすむことも。
その辺りのことについて、お伝えします。
贈与が得か?相続が得か?自宅を贈与する場合の注意点
一戸建てであれ、マンションであれ、居住用の自宅をご子息に贈与しようとする場合があります。
将来、確実に相続税がかかる場合、あるいは都市開発や建て替えにより自宅の値上がりが予想できる場合など。
特に、親世代が高齢になると、贈与ありきで進めてしまうケースが見受けられます。
贈与すれば相続したときの財産は減りますが、相続時の評価が必ずしも低くなるとは限りません。
贈与をするケースとしては、
- 暦年贈与で110万円前後をコツコツと
- 相続時精算課税で2,500万円まで無税で
- 各種特例を使ってゼロにする
があります。
暦年贈与を使う場合
暦年贈与は110万円まで無税なので、その範囲内で現金を贈与することはありますが、
不動産だと税率はそれなりに高くなるので、あまり現実的ではありません。
相続時精算課税を使った場合
精算課税をつかった場合、2,500万円まで無税で贈与できるので、不動産の財産移転も可能です。
また、将来に値上がりが期待される不動産なら、価額が上がるまえの生前に贈与しておくも一つでしょう。
ただし、精算課税を一度選択すると暦年贈与に戻れないというデメリットがあります。
贈与税を払わずに不動産を移転したものの、その後、暦年贈与で現金を贈与したいと思っても使えません。(もっとも、2,500万円までの枠内での贈与は可能です)
また、精算課税を利用した財産については、小規模宅地等の特例を受けることはできません。
この特例を利用すると、自宅であれば8割控除されるので、2割の評価で済みます。
極めつけは、贈与しても結局、相続財産に加算するので相続税対策とはならないこと。
将来、どう考えても相続税はかからないケースであったり、生前にどの財産をどの相続人に移転するのか確定させるために利用する手もありますが、相続税がかかるケースだと使い勝手は良いとは言えません。
各種特例を使う場合
- 教育資金の一括贈与
- 結婚・子育て資金の一括贈与
- 住宅取得資金の贈与
といった、親から子・孫世代への贈与の特例を使えば、無税で資金の移転ができることがあります。
ただし、これらは金銭によるものなので、不動産は対象には入っていません
贈与税の配偶者控除だと2,000万円までの自宅を無税で贈与できますが、これは夫婦間限定なので親子での適用はありません。
小規模宅地等の特例
精算課税を使った場合、将来、その財産については小規模宅地等の特例が使えないことは前述しました。
小規模宅地等の特例は、相続時に限ったことなので、贈与時に使うことはできません。
相続だと8割減の2割評価で良かったのに、贈与して多額の税金を支払うのは懸命ではありません。
諸費用
更に贈与すると支払うのは贈与税だけではありません。
- 登録免許税(不動産価額の1,000分の20)
- 不動産取得税(固定資産税評価額の3%)
- 司法書士への手続き費用
- 税理士への申告報酬
など、精算課税を利用して贈与税をゼロにしても、結構な諸費用がかかることになります。
仮に自宅が2,000万円の場合だと
- 登録免許税 2,000万円✕1,000分の20=40万円
- 不動産取得税 2,000万円✕3%=60万円
[aside type=”normal”]不動産取得税には軽減措置があるので、この限りではありません[/aside]
その点、登録免許税は相続だと1,000分の4なので、贈与の4分の1ですし、不動産取得税については相続・遺贈だとゼロです。
そう考えると、
- 小規模宅地等の特例で8割減
- 登録免許税の減額
- 不動産取得税ゼロ
- 贈与時の諸費用ゼロ
の相続で移転した方が、結局、節税になるのかなと。
その人、その人で前提条件は違いますが、贈与ありきで考える前に、一度、身近な税理士さんにご相談されることをおすすめします。
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