相続税・贈与税

唯一の相続人が老人ホームに入居する親である場合の小規模宅地等の特例<No 1083>

yujiroyamamoto

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唯一の相続人が老人ホームに入居する親である場合

昨今、高齢化で老人ホームでお亡くなりになられる方が増えました。

お亡くなりになられた方、いわゆる被相続人が老人ホームに入っている場合、小規模宅地等の特例(以下、「小宅」)が受けられるのかどうか。

以前、この規定は別居として取り扱われ、適用を受けることができませんでした。

それが、平成25年度の税制改正により、自宅に居住しているものとみなして適用を受けられるようになりました。

ただ、被相続人ではなく「相続人」が老人ホームに入っている場合、小宅の特例を受けることができるのか?

しかも、その相続人が唯一の相続人である場合はどうなのか?

法令・通達・質疑応答などドンピシャの取り扱いがないので、通常通り小宅の特例に照らして判断します。

相続人が老人ホームに入居する親である場合の小規模宅地等の特例

小宅の特例には、

  1. 特定事業用宅地等
  2. 特定同族会社事業用宅地等
  3. 特定居住用宅地等
  4. 貸付事業用宅地等

の4つ規定があります。

本ケースは、これらのうち特定居住用宅地等の規定から判断します。

特定居住用宅地等に該当するには、被相続人との間柄、相続開始時や申告期限の状況を勘案して判定します。

配偶者である場合

相続人が配偶者である場合、被相続人の居住の用に供されていた宅地であれば、特定居住用宅地等として小宅の特例を受けることができます。

例え、相続人が老人ホームに入っていたとしても受けられるので判断に迷うことはありません。

同居親族である場合

相続人が同居親族である場合、次のすべての要件を満たす必要があります。

  1. その相続人が相続開始時において被相続人と同居していた
  2. 申告期限まで宅地を有している
  3. 申告期限までその家屋に居住している

生計一親族である場合

相続人が被相続人と生計を一にしていた親族である場合、次の要件を満たす必要があります。

  1. 申告期限まで宅地を有している
  2. 申告期限まで自己の居住の用に供している

生計別親族である場合

相続人が被相続人と生計を別にしていた親族である場合、次の要件を満たす必要があります。

  1. 相続開始前3年以内に持ち家に居住したことがない
  2. 相続開始前のいずれの時においても(相続開始時の)居住家屋を所有していたことがない
  3. 被相続人の配偶者又は同居親族がいない
  4. 申告期限まで宅地を有している

当てはめ

唯一の相続人が親であり、かつその親が老人ホームに居住している場合、 自宅を特定居住用宅地等として小宅の特例を受けることができるのか。

相続人は被相続人の親にあたるので、「配偶者」以外3つの規定により判断することになります。

同居親族

1つ目の同居親族の適用について、老人ホームに入居している親が同居親族に当たるか否か。

被相続人が老人ホームに入居している場合、平成25年度税制改正で「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」に該当し特例が受けられるようになりました。

この考え方を借用できないか検討しましたが、当てはまる事例・文献は見当たらず。

所轄税務署に問い合わせたところ、例外規定はないとの回答を受けました。

よって、相続人が老人ホームに入居した本ケースでは、相続人は同居親族に該当しないと判断します。

生計一親族

2つ目の生計一親族について

1つ目の判断を受けて、相続人が老人ホームに入居している場合、自宅に居住していることにはなりません。

よって、適用なしと判断します。

生計別親族

3つ目の生計別親族について

特定居住用宅地等のなかで、要件が最も多いこの規定に該当するのかどうか?

  1. 老人ホームに移ってから10年経過しており、3年以内に持ち家に居住したことがない
  2. 当初の自宅名義は夫であり、夫亡き後は、被相続人である子名義であった。よって、持ち家に居住したことがない
  3. 当該相続人は唯一の相続人である。よって、配偶者や同居親族はいない
  4. 申告期限まで宅地を売却していない。よって、引き続き宅地を有している

1〜4すべての要件に該当しているため、生計別親族の特定居住用宅地等として小宅の特例を受けるものと判断。

所轄税務署に問い合わせたところ、生計別親族として小宅の特例を受けて差し支えないとの回答を受けました。

最後は自分で判断する

小宅の特例は設定が細かく、かつ、要件が多いので判定に悩みます。

イレギュラーな事例は基本に戻って規定に該当するかじっくり見ていきます。

あとは、所轄税務署ほか関係各所にお伺いを立てた上で、最終的には税理士自身が自分で判断します。

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