所得税

フリーランスとして独立したら「個人」を選ぶべきか?「法人」を選ぶべきか?法人化のメリット&デメリット<No 516>

yujiroyamamoto

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フリーランスの法人化

フリーランスとして独立したら、
「個人を選ぶべきか、法人を選ぶべきか?」
は迷うところでしょう。

多くの方が個人のフリーランスとして出発していく中、
仮に法人化したらどうなるのか?

そこで、フリーランスの法人化について、
メリットとデメリットを挙げてみます。

(便宜上、資本金1億円以下の中小企業をモデルにしています)

法人化のメリット

法人化は「税金」「経費」などコスト面でいくつかのメリットがあります。

  1. 節税対策がしやすい
  2. 社会保険に加入できる
  3. 税率が一定
  4. 9年間、赤字を繰り越せる(個人は3年間だけ)
  5. 社会的信用度が高い

など。

1、節税対策がしやすい

法人化する理由の多くはこれでしょう。

では、なぜ法人化すると節税対策がしやすいのか?

それは、これまで個人(自分)ひとりであった状態から、
個人と法人(自身が代表者)の二人をコントロールできるようになるからです。
(法人の「人」の字は、一つの人格があることを意味しています)

よって、二人をコントロールすることで所得を分散させることができます。
(節税対策の基本は所得を分散させること)

個人と法人の間で所得を分散させることでトータルの税額を抑えます。

  • 会社で自分の給料を経費にできる(法人税の節税)
  • 給与所得控除も受けられる(所得税の節税)
  • 個人と法人で家賃の収受ができる(法人税と所得税の調整)

2、社会保険に加入できる

退職してフリーになると、社会保険がなくなります。

以降、健康保険に加入するには、

  1. 勤務先で任意継続
  2. 国民健康保険(以下、国保)に加入

の2択です。

1の任意継続は勤務先の社会保険に継続して加入できる制度です。

退職日の翌日に任意継続の資格を取得し、2年間加入できます。

ただし、勤務時代は勤務先が半額を負担してくれていたので、
本人負担は半額で済んでいました。

これが退職すると、勤務先の負担がなくなるので、
本人が全額負担することになります。

当然、保険料は倍になり重い負担になります。

2 1の任意継続をしなければ、国保に加入することになります。

国保の窓口は、お住まいの市町村にあります。

国保の算出方法は、社会保険料とは異なります。

これまで自分の給料だけが基準となっていましたが、
国保は世帯全体の所得が基準になります。

仮に、配偶者である奥様(あるいは旦那様)に収入があれば、
その収入が合算されることになります。

加えて、前年分の所得が保険料の基準になるので、
開業直後は仕事がないのに保険料だけ高額になることも。

その点、法人化をして自分で給料をとれば、
社会保険に加入できます。

開業当初であれば給料を高額に設定する必要もないので、
保険料も比較的安価になります。

ただし、厚生年金も同時加入になりますが、
年金は掛け捨てではないので将来の保障になります。

3、税率が一定

個人に課せられる所得税は、所得が増えれば右肩上がりに増えていきます。

対して、法人に課される法人税は、ほぼ一定です。

<資本金1億円以下の普通法人の場合>

年800万円以下の所得・・・19%
年800万円超の所得・・・23.4%(平成30年4月1日以降開始事業年度は23.2%)

このように800万円を境として、設けれた税率は2つのみです。

なので、所得が低いうちは個人のままで、
所得が800万円前後から法人化を検討するのも一案です。

事業が軌道に乗り始めて、コンスタントに所得が500万円を超えるようであれば
法人化のメリットはより大きくなるでしょう。

4、9年間赤字を繰り越せる(個人は3年間だけ)

赤字になれば税金がかからないだけでなく、
その赤字を翌年以降に繰り越すことができます。

そして、繰り越した赤字は翌年以降の黒字と相殺することで
税金を減らす効果があります。

この制度は個人にもありますが、個人が繰り越せるのは3年だけです。

対して、法人は9年間(2018年現在)繰り越せます。

5、社会的信用度が高い

会社法の改正で1円でも会社ができるようになりました。

なので昔ほどではなくなりましたが、それでも個人よりは世間受けがよく信用度が高いのも事実です。

法人化のデメリット

法人化もいいことばかりではありません。

デメリットも理解しておきましょう。

1、税務調査の頻度が高い

法人に税務調査が入る率は個人に比べて高いです。

個人に調査が入る割合は1%前後のところ、
法人だと5%前後です。

ただ、近年、法律の改正で調査に伴う税務署側の負担が増えました。

そのため、以前はきっちり3年に一度は調査が行われた優良企業でも、
3年以上の間隔が空くようになりました。

2、法人の設立コストが高い

法人を設立するには、

  1. 自分で全部やる
  2. 司法書士にお願いする
  3. クラウドサービスを利用する

3つの方法があります。

1の自分でやれば一番安くつきますが、その分時間もかかります。

手をつけて最後まで出来ればいいですが、途中で断念する可能性もあります。

自分でやった場合のコストは、

  • 印紙代(公証役場) 40,000円
  • 定款認証(公証役場)50,000円前後
  • 登録免許税(法務局)150,000円(最低)

トータル25万円以内に収まります。

2の司法書士にお願いすると1の25万円に司法書士への報酬が加算されます。

報酬は5万から10万が相場ですが、税理士にお願いすると無料でやってくれる
事務所もあります。

ただし、以降の顧問契約が前提になるので気をつけましょう。

3のクラウドサービスは、ネットを利用して法人設立を行います。

ただし、すべてネットで完結できるわけではありません。

私自身、自分の法人をクラウドで作ったことがあります。

その様子を記事にしているので、そちらを参考にしてください。

会社設立freeeで定款の認証。自分で会社をつくってみる<No 120>

会社設立freeeで登記書類の作成。自分で会社をつくってみる<No 131>

いずれにしても最低20万円程度の費用がかかりますが、
個人であれば税務署に開業届を提出するだけです。

もちろん、無料です。

3、交際費に限度がある

法人が費用にできる交際費には限度があります。

  1. 年間800万円
  2. 飲食代の50%

いずれか多い金額を超える部分は費用になりません。

要は、
1 交際費のトータルが800万円以下なら全額費用に認められ、
2 交際費のトータルが800万円を超えかつ、そのうち飲食代の50%だけで800万円を超えたら
  飲食代の50%まで認められる。
 (例:交際費2,000万円うち飲食代が1,900万円なら800万円<1,900×50%=950万円で950万円まで認められる)

一方、個人であれば交際費に限度はありません。

これを利用して個人が高額の交際費を計上するケースがありますが、
そもそも個人の規模で800万円を超える交際費が適正なのか疑わしいところです。

やはり、そのような数字は目立ちやすいので、おのずと調査の対象になりやすいです。

4、給料を途中で変更できない

個人で取れない給料を法人で取れば費用になるのは前述の通りです。

ただ、この制度を利用して給料の額をやたらと上げ下げすると、
税務署からのペナルティを受けることになります。

難しい法律は割愛しますが、
基本、法人の代表者が取る給料は役員報酬と呼ばれます。

この役員報酬には従業員が通常受ける給料よりもより厳しい法律が
設けられているのです。

具体的には、役員が取る報酬(定期同額給与)は毎月定額である必要があり、
かつ、変更ができるのは株主総会が終わってから、
新年度開始後三ヶ月以内と決められています。
(イレギュラーなケースは割愛します)

この決まりを破って事業年度の中途で報酬を変更してしまうと、
余計な税金がかかってしまいます。

なので、決算が終わってから次の年度の予測を立てて
所得税・法人税の節税面からだけでなく、キャッシュ的に問題ないかを検討する必要があります。

5、申告書作成のハードルが高い

個人であれば自分で申告書を作成することができますし、
仮に判断に迷っても税務署や申告会場へ行けば、
書き方を教えてくれます。
(十分なレクチャーが受けられる保証はありませんが)

一方、法人だとそのハードルが一気に上がります。

おそらく、既得権益を失わないように敢えてハードルを上げているように
思うのですが・・

ただ、最近では税理士でなくても自分で作成できるソフトがちらほら出てきてます。

税理士いらず
クラウド申告freee

これで一件落着かと言えばそうとも言えません。

というのも、ある程度の経験がなければ申告書を書けないからです。

仮にこれらを利用するのであれば、
税理士の個別コンサルを受けながら、申告書を完成させる。

そのまま出すのが不安であれば、1年目は税理士に提出してもらい、
2年目以降は自分で提出する。

そこで不安であれば申告書のチェックのみ税理士に依頼する。

自分で手順を覚えることで、
税理士コストを抑えることができます。

そのためにこういったこともサービスメニューに挙げています。

個別コンサルティング

自分の位置を把握する

以上、法人化のメリット・デメリットをお伝えしました。

今回、「税金」「経費」などいわゆるコスト面の話がメインになりましたが、
そういったコスト云々の前に、「法人としか取引してくれない」といった
業界特有の取引慣行があれば選択の余地はありません。

ただ、こういったことを知った上で法人を作るのと、
そうでないのでは後々大きく違ってきます。

自分が今、どの位置にいて何ができるのかを念頭に置きましょう。

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