親が遺言信託をつくったときのリスクと対処法
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)ご先祖様のお墓参り
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中身をわからずに契約していることもある
巷で耳にする遺言信託。
銀行(信託銀行)が取り扱う、相続に関するサービスです。
これ、契約される人が、内容をどれだけ把握されているのか疑問に思うことがあります。
場合によっては、言われるがまま契約して、中身をわかっていないことも。
遺言信託と遺言はどう違うのか、親が遺言信託を作った場合の対処法についてお伝えします。
親が遺言信託をつくったときのリスクと対処法
遺言のキホン
まず、遺言書について。
遺言書は、生前に故人の意思を明確にすること。
遺言書があると、親の亡きあと相続人のあいだで揉めるリスクが軽減されます。
遺言書には、
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
の2種類(秘密証書遺言を含めると3つ)があります。
自分で書いたものを自宅で保管しておくのが自筆証書遺言。
(自筆証書遺言も、公証役場で保管してもらえるようになりました)
対して、公の機関である公証役場で公正証書として保存してくれるのが公正証書遺言です。
遺言信託とは?
遺言信託を説明する前に、信託とはなんぞやと?
信託とは、
自分の大切な財産を、信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って大切な人や自分のために運用・管理してもらう制度
)一般社団法人 信託協会 より
です。
この信託を、遺言に当てはめたのが遺言信託であり。
遺言信託は、遺言の作成・保管・執行まで金融機関(信託銀行)が扱うサービスです。
前述の自分が「遺言書」であり、信頼できる人が「信託銀行」となり、大切な人が「相続人」となります。
つまり、遺言者と相続人のあいだに入って、相続に関する一連の手続きを信託銀行がしてくれるのが遺言信託というわけです。
具体的な内容は、
- 公正証書遺言の作成→提携先の司法書士へ依頼
- 遺言書の保管
- 遺産分割協議書の作成→提携先の司法書士 or 税理士へ依頼
- 不動産・金融資産の名義書換→提携先の司法書士へ依頼
- 相続税の申告→提携先の税理士へ依頼
といったところ。
三菱UFJ信託銀行の遺言信託だと、初期費用として33万円ないしは110万円がかかります。
- 30万円型プラン 33万円
- 100万円型プラン 110万円
30万円のほうだと、これで公正証書遺言を作ってくれて保管もしてくれるのであれば、悪くはありません。
ただ、これ以外に、年間保管料として55,000円、さらに、遺言執行報酬として、
- 30万円型プラン 最低77万円
- 100万円型プラン 最低165万円
がかかります。
遺言執行報酬は、相続税評価額によって異なります。
- 1億円以下の部分 1.8%
- 1億円超3億円以下の部分 0.9%
- 3億円超10億円以下の部分 0.5%
- 10億円超の部分 0.3%
- UFJグループ預かり資産 0.3%
金融資産がなくて自宅だけの場合、土地の評価があるのでそれなりの報酬になります。
入り口部分は比較的安価ですが、出口の部分はそれほど安くはありません。
銀行機関なので、しっかり管理してもらえるという安心感はありますが・・
では、高い報酬を信託銀行に払ってでも、遺言信託を利用したほうがいい場合について触れてみます。
遺言信託を利用する人
自分亡き後、相続人がいない、いたとしても心許ない場合は、遺言信託に頼ることはあるかと思います。
その他、
- 相続財産が数億を超えている
- 寄与分がある
- 特別受益がある
といった相続人同士の調整が必要な場合に、第三者に入ってもらいたいときにも。
懇意にしている税理士や司法書士がいれば、そのかたへ頼めばいいのでしょうが。
特定の相続人に思いが偏ることもあるでしょうから。
メリット
遺言に関する入り口から出口まで、一括で請け負ってくれること。
公正証書遺言をつくってくれて、保管してくれて、遺言の執行までしてくれます。
金融機関で保管してもらえるので、紛失のリスクがなくなること。
信託銀行が遺言執行者となるので、自分亡き後、きちんと対処してもらえるという安心感はあるでしょう。
不動産の移転登記は司法書士へ、相続税の申告は税理士へ依頼してくれます。
こういった仲介の役割を、相続人に代わってやってもらえるというところがメリットでしょう。
デメリット
遺言書の作成は、信託銀行を介さなくても、本人が司法書士へ直接頼めば仲介手数料はとられません。
相続後、遺言執行者として信託銀行がやることは、
- 遺産分割協議書の作成→提携先の司法書士 or 税理士へ依頼
- 不動産・金融資産の名義書換→提携先の司法書士へ依頼
- 相続税の申告→提携先の税理士へ依頼
といったところ。
結局、信託銀行が入り口でも、それぞれの業務は司法書士や税理士へ頼むことになります。
こうした士業への報酬は、前述の遺言執行報酬には含まれていません。
つまり、信託銀行は保管と仲介をするだけで100万以上の手数料をとることになります。
遺言の保管と相続後の仲介で最低77万〜165万、相続財産が1億以上であればさらに上乗せされます。
- 30万円型プラン 最低77万円
- 100万円型プラン 最低165万円
遺言の執行は、相続人であれば無償でやってもらえること。
これを、信託銀行にお願いするだけで、結構な報酬がかかるということです。
相続人がやれる範囲でやって、やれないところは税理士や司法書士にお願いすることも可能です。
仮に、揉めていたら、信託銀行は何もやってくれないので、別途、調整役の弁護士に依頼することになります。
これもまた、別に費用がかかります。
こうしたことを、高齢の両親がキチンと把握しているのかどうかは怪しいところです。
実際、遺言信託をつくったかたに、その辺りのところを聞いたところ、遺言執行費用のことは知りませんでした。
相続財産が数億円以上、なおかつ、金融資産がそれなりあって、遺言執行費用を現金払いするくらい余裕の相続であれば問題ないですが。
不動産だけで金融資産がない場合は、100万円超の報酬は高いと感じるでしょう。
費用対効果を考えると、正直、おすすめしません。
対処法
仮に、親が遺言信託をつくってしまっている場合、解約するとなると解約手数料がかかることがあります。
- 110万円プラン・・・ゼロ
- 33万円プラン・・・22万円
安くない報酬を信託銀行に払うことを考えると、解約した上で、公正証書遺言を自分(司法書士に依頼)でつくるほうが安く済みます。
解約しなかった場合、新たにつくった遺言書に効力があります。
とはいえ、遺言信託を放置していると、あとあとややこしいので、これはこれで解約しておいたほうが懸命でしょう。
You Tubeでもお話していますので、よろしければ御覧ください。
)You Tube 親が遺言信託をつくったときのリスクと対処法
遺言執行費用を払うのは相続人
遺言信託のメリット・デメリット、さらに、親が遺言信託をつくったときの対処法についてお伝えしました。
大手がやってるから便利なのかと思いきや、資産家相手の商品なので、それなりの報酬を取りに来ます。
そのあたりのことを、契約時にキチンと説明しているのかどうか?
実際、つくった人に聞いてみると、わかったようなわからないような感じです。
知識武装していれば、自分でやれることはやって、やれないことは士業に直接頼むことができます。
もらった財産とはいえ、信託銀行へ報酬を支払うのは相続人です。
このあたりのことは、事前にじっくり話し合っておきましょう。
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