免税事業者がインボイス登録しないという選択<令和5年度税制改正大綱対応>

浸透していないインボイス

12月16日の金曜日、税制改正大綱が発表されました。

今回の改正で、一番の話題といえば、インボイスでしょう。

マスコミや税理士界隈で賑わっていますが、世間にはそれほど浸透しておらず。

インボイスの開始は、来年10月。

もう一年を切っています。

国税庁が、そうした状況を危惧しているのが、今回の改正からは伺えます。

というのも、免税事業者が、インボイス登録して課税事業者となったときの緩和措置がとられているからです。

今回は、その緩和措置と、さらに、「免税事業者がインボイス登録しないという選択」についてお伝えします。

免税事業者がインボイス登録しないという選択

インボイスとは?

インボイスとは、発行者が消費税の課税事業者であることを示す登録番号が記載された請求書のこと。

インボイス制度は、請求書に登録番号を付すことを義務化することで、これまで消費税を払っていなかった免税事業者に消費税を支払うように促す改正です。

売上1,000万円以下の事業者は、これまで消費税を支払う義務がなく、もらった消費税はそのまま懐に入ったまま、いわゆる益税となっていました。

一般消費者が払ったものの、国がもらい損ねた益税を「しっかりいただきにきた」のがインボイス制度の目的です。

改正点について

インボイス制度に関する改正は、大きく2つあります。

  1. 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置
  2. 仕入税額控除1万円未満に関する経過措置

小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置

1つ目は、免税事業者がインボイス登録して、課税事業者となった場合、支払うべき消費税の負担を軽くしてくれます。

本来であれば、次のように、もらった消費税(売上にオンされた)から払った消費税(仕入れや経費にオンされた)を差し引いた額を国に支払います。

売上  550万円(消費税 50万円)
仕入 △330万円(消費税 30万円)
利益  220万円(消費税 20万円)
納める消費税 △20万円
手元に残るお金 200万円

国に納める消費税は、50ー30の差額の20万円。

これが、改正による緩和措置で、売上にオンされた消費税の2割で済むことになりました。

売上にオンされた消費税50万円 ✕2割=10万円が納める消費税

実際の売上に対する仕入や経費(消費税を含んだ)の割合が8割未満だと、今回の緩和措置は有利に働きます。

仕入や経費は、消費税の法律において、

  • 課税
  • 非課税(保険料など)
  • 課税対象外(給料、税金など)

と3つ区分に分かれ、そのうち、課税となる取引のみ差し引くことができます。

国としては、免税事業者が課税事業者になって欲しいが故の緩和措置ですが、あくまでも、3年間の期間限定の法律です。

それでも、3年間、消費税を払うことに慣れてもらって、4年目以降、本来の消費税を払ってもらえればいいといったところでしょう。

仕入税額控除1万円未満に関する経過措置

インボイスに関するもう1つの改正は、1万円未満の支払いに係る請求書については、登録番号が記載されていない通常の請求書でも、仕入れ税額控除(消費税を支払ったもの)として計算できるといったもの。

この場合、自身が消費税を申告して国に支払うケースを想定しています。

元々、課税事業者である人や今回、インボイス登録して消費税課税事業者となった人が消費税の計算をするときに、仕入や経費の支払い先がインボイス登録をしていない場合。

支払い金額が1万円未満であれば、これまで通り、消費税を支払ったものとして計算できます。

少額な支払いについても厳しくしてしまうと、市場が混乱してしまうからでしょうか。

こちらは、6年間の期間限定措置になります。

また、認められるのは、売上が1億円以下の事業者に限られます。

インボイス登録しないという選択

今回の改正で、インボイスに関する緩和装置が取られていますが、インボイス登録せず免税事業者を続けた場合に実際のところどうなるのか?

これまでだと、免税事業者でも、売上に消費税をオンすることができました。

売上  1,100万円(消費税 100万円)
仕入 △440万円(消費税 40万円)
利益  660万円(消費税 60万円)→ 本来、納める消費税
納める消費税 0円
手元に残るお金 660万円

本来、納める消費税60万円が、手元に残っていたのがこれまでの制度。

<インボイス登録した場合>

これが、インボイス登録すると、これまで手元に残っていた60万円の消費税を払うことになります。

売上  1,100万円(消費税 100万円)
仕入 △440万円(消費税 40万円)
利益  660万円(消費税 60万円)
納める消費税 △60万円
手元に残るお金 600万円

60万円減るとはいえ、これは、得意先から預かったお金。

本来は、国に納めるべき税金です。

<インボイス登録しない場合>

では、消費税を払いたくないからインボイス登録しないとどうなるのか?

インボイス登録をしなければ、2023年の10月以降は、売上にかかる消費税を請求書に記載できなくなります。

売上  1,000万円(消費税 ナシ)
仕入 △440万円(消費税 40万円)
利益  560万円
納める消費税 ナシ
手元に残るお金 560万円

免税事業者のままでいると、消費税分100万円が得られなくなります。

それでいて、仕入れや経費にかかる消費税はこれまで通りオンされています。

インボイス登録しないと消費税を払わないので、一見、手元にお金が残るように思いがちですが。

手元に残るお金は600万円ー560万円=40万円減っています。

つまり、インボイス登録したほうが、手元に残るお金は多くなるということです。

<インボイス登録せず、かつ、値上げした場合>

では、インボイス登録しないで、かつ、価格を据え置きにすればどうなるのか?

売上  1,100万円(消費税 ナシ)
仕入 △440万円(消費税 40万円)
利益  660万円
納める消費税 ナシ
手元に残るお金 660万円

手元に残るお金はこれまで通り。

ただし、得意先が、「インボイスなし、かつ、価格据え置き」状態を許してくれるかどうか?

価格据え置きとはいえ、税抜価格は1,000万から1,100万円に上がっているので実質値上げです。

さらに、得意先が、「課税事業者、かつ、原則課税」適用事業者だと、自社の浮いた消費税を得意先が負担することになります。

得意先が、税に明るくない個人や小規模事業者だと何も言ってこないかもしれませんが、税理士が入っているところだとすぐにわかるでしょう。

なおかつ、現在は、インボイス制度を理解している事業者はごく少数ですから何も言われないかもしれませんが。

そのうち、メディアが煽るようになれば、「インボイス登録をしてくれ」と要請があるかもしれません。

場合によっては、知らないあいだに実質値上げした分を遡って請求してくる可能性も。

請求してこなくても、悪い印象を持たれて取引を外されることもあるでしょう。

極端にグレーなケースを紹介しましたが、グレーなケースはそれなりにリスクがあるということです。

こうした折衝ごとをする精神的負担も加味すれば、結局、インボイス登録しておいたほうが、
精神的負担なく、お金も残ります。

とはいえ、学習塾や小売店のような、お客さまが消費税の納税義務がない商売だと、インボイス登録しなくても、誰も文句は言わないでしょう。

仮に、請求書や領収書を求められることがあっても、そこに「登録番号がないからダメだ」とは言われないでしょうから。

免税事業者がインボイス登録すべきか否かの判定<No 1391>

インボイス開始までの「免税事業者」の動きかた<No 1407>

記事を書いている人が一番学んでいる

令和5年度税制改正大綱のなかから、今日はインボイス制度の改正についてお伝えしました。

こうして書いていてもうんざりするほどややこしいです。

とはいえ、私が一番勉強になったのは、ここだけの話です。

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